スパイラル

 

 僕が現在勤めている学習塾は、わりと授業の自由度が高く、担当クラスにあったテキストを教師の裁量で独自に作ったり、カリキュラムをある程度変えることが可能である。

 今年僕が担当している高校3年生の上位クラスの生徒たちは、2年生の後半から数学3Cをすでに勉強し始め、大雑把ではあるが3年の春までに3Cの教科書内容は一通り終えている。

 その後の数学3Cについて僕は、1学期は標準的な入試問題を全単元まんべんなく演習し、さらに夏期講習では、1学期に扱った事柄の総まとめ的な問題を演習する、というカリキュラムを構成した。

 ということは彼らは同じ単元を、2年生・3年生1学期・3年生夏期講習と、時期を変えて3回勉強することになる。

 初めて触れた2年生のときは、単なる積分の計算問題であっても、ただただ「難しすぎる・・・」と嘆きながら、見よう見まねで問題を解いていた。

 2回目である3年生の1学期は、入試問題を扱うので、「やっぱり難しい」という声は消えない。

 だが、3回目である夏期講習の授業中では、どの問題についても「そーいやそんな考え方あったぞ!」といった感じで、はるかに理解が早いのだ。

 そして現在彼らは、面積や体積を求める問題などについて、「見よう見まねではなく、正しく式を立て、(計算間違いさえしなければ)スムーズに答えが出せる状態」になることができた。

 時期を変え、時間をかけて繰り返し、そしてだんだんと問題をレベルアップさせていくことで、段々と「あの時勉強したあれと同じだな!」という感覚をもつことができ、それが実力につながるのだ、と僕は感じた。

 このクラスでは秋以降数学3C全単元にかけて、さらに発展的な問題を扱っていく予定である。ベースはほぼ出来上がってきたから、吸収するのも早いだろうと僕は予想している。

 

 高校3年間を通しての数学の勉強の仕方はいろいろあると思う。

 下の表では便宜的に、単元と内容のレベルにより3×3=9通りに分けてみた。同色が同じ時期に学ぶ単元を表している。

 

(表1)

 

単元A

単元B

単元C

入試発展

A発展

B発展

C発展

入試標準

A標準

B標準

C標準

基本

A基本

B基本

C基本

 

(表2)

 

単元A

単元B

単元C

入試発展

A発展

B発展

C発展

入試標準

A標準

B標準

C標準

基本

A基本

B基本

C基本

 

 僕は今まで漠然と、表1のように、一つの単元で基本→標準→発展のように学ぶことを繰り返すのがいいかな、と思っていた。特に学校での授業などは、このやり方に近いだろう。

 だが表2のように「一通り全単元の基本を押さえてから次にレベルアップしていく」のもまた一つの手かな、と考えるようになってきた。とりあえず早い段階で基本の部分は一通り終了させ、あとは生徒の目標とする大学に合わせて標準まで勉強するか、発展までかを変えればいいのだ。そしてこの表2のようなやり方をしているのが、まさしく最初に例に挙げた生徒たちである。

 僕は表2のようなやり方を「スパイラル」と呼ぶことにした。近年「デフレスパイラル」などの言葉のように、ネガティブなイメージと一緒に語られがちな言葉ではあるが、この言葉自体は単に「螺旋」という意味である。

 まさしく螺旋階段を上るように、生徒が少しずつレベルアップしていければよいと思う。

 

(2006.08.11)

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