簡潔と完結

 

 学年が下になるほど、授業は難しい。

 3年生のクラスならば、上位クラスの生徒は教科書の公式は大体覚えているから、あとはその組み合わせ方とか、使いどころを混乱しやすい複数の公式の使い分け方などを、しっかりマスターしてもらうことが主体となる。下位クラスでも公式の確認程度はしながら進むが、本人たちも「やらなきゃいけないんだ」と腹をくくっているから、内容が難しくても気合自体が失われることはそう多くない。

 一方1年生のクラスならば、確かに高校受験は突破してきたけれど、高校数学はどうしても新しい記号のオンパレードになりがちだから、圧倒される生徒が多い。そして下手をすると、数学が「嫌い」だと感じるようになり、今後の彼らの人生にも関わってくる。

 何週間か前、僕自身の慣れもあって、1年生の授業をわりと惰性でこなしてしまった。

 そしたら生徒の皆のテンションもあまり高くなく、しまいには授業後「先生、これって人生にとって何の役に立つんですか??」と言いだす生徒が出る始末であった。それを言わせてしまったら、はっきり言って授業は失敗である。

 僕は反省した。先輩の教師にも相談して悩んだ結果、次の週は以下のことを必ず守ろうと心に決めた。

  1.伝えたいテーマは、明確に伝える(簡潔)。

  2.伝えたいテーマは、その授業内で伝えきる(完結)。

 1.は、その日の授業全体の統一的なテーマを見つけるようにする。そのためには前後のつながりや問題の流れをしっかり考え、その日の全体像を見えやすくする。場合によっては、テキストに配置された順番と授業で扱う順番を変えることもある。

 2.は、皆がいいろいろ問題を解いている間に授業の終了時刻が迫ってきているような場合、もう一つ話そうと思っていたことをやめにして、授業のまとめを話したりする。解説だけして問題を解く時間がない、ということはしない。

 言ってみれば当たり前すぎることだが、改めて原点に戻った気がした。

 実際そのような授業を数週間続けてみて、幸運なことに、授業中は非常に良い緊張感が続いているし、定着度も高いようだ。

 

(2005.10.14)

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