予習不可能

 

 先日友人が、俺に数学を教わりに我が家に泊まりに来た。

 なんでも公務員試験を受けるという。その対策問題集を見せてもらうと面白いもので、英語・国語・理科・社会、そして数学と、オールラウンドにいろいろな科目から出題されている。数学に関しては、三平方の定理、一次関数、2次方程式、確率など、ほぼ高校1年生までに勉強する内容が中心のようだ。

 彼の分からなかった問題を俺が解説すると、本で読むだけより頭に入りやすかったという。彼いわく分からない問題に出会ったとき、社会など文系の科目ならば解説を読んで分かるけれど、数学となると、何度も読んでも、とことん分からないことの方が多いという。

 俺がかつて付き合っていた人も数学は苦手で、先生に「予習してこい」と言われて教科書を開けてみても、何にも分からなかったそうだ。

 そしてかく言う俺も、新しい記号のオンパレードに打ちのめされ、数学の予習だけはできなかった。

 数学は予習できない。できるとすれば、受験生になったときに予備校などで入試問題を解く時だけだろう。概念や使う公式などは教科書で一通り勉強していて、一応は頭に入っているからだ。

 だから学校や塾の教師に必要になのは、生徒が初めてその単元に触れるとき、どれだけ五感に訴えてその概念を身体にしみこませられるかだろう。それも一回で。初めて受ける授業が分かりづらければ、多分後で2回3回同じ説明を受けたとしても、理解しづらくなっているだろう。

 改めて、自分の携わる教師という仕事の求められる意味、そして責任をひしひしと感じるのだ。

(2004.09.13)

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